プロパティマネジメント(PM)こそが本当の "オーナーズエージェント"

オーナーズエージェント大家さんの代理人の役割 藤澤 雅義

第2章 オーナーの資産活用をこう発想する
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「不動産投資」の視点でマンションを運用 不動産の価値を決めるもの

  私たちPMの仕事が、オーナー様の資産を守り、高い運用益を提供することを目的としていることはすでに述べました。プロパティ・マネージャーは建設業者ではありませんから、建物を建てさえすればいいとは考えません。アセットマネジメントの発想が必要なのです。
  たとえば地主様から、数百坪の土地を活用したいと相談されたとします。まず検討するのは、その土地をどう使うことがオーナー様にとってベストであるかです。その結果、マンション経営が最も有効な運用法だとなれば、次の段階としてどういうマンションにすればいいかの検討に入るわけです。
  その際も、建設業者であれば敷地いっぱいに可能な限り大きな建物を建てたがるかもしれませんが、必ずしもそれがオーナー様にとってベストであるとは限りません。将来の相続税や不時の入用のために、土地に余裕をもたせたほうがいいケースもあります。つまり、土地をどう使うかにしても、どんなマンションを建てるかにしても、総合的な「資産管理」と「不動産投資」の視点でオーナー様資産の活用を考えるのがプロパティ・マネージャーの役割です。  

  では、不動産投資を考える際に、最も大切な視点は何でしょうか。それは「不動産の価値」をどう評価するかです。
  国や地方自治体が行う公的な土地評価には、公示地価、基準地価、路線価格、固定資産税評価額の4種があり、「一物四値」といわれているのはご存じの通りです。土地や建物などの市場価値を示す鑑定評価にも、原価法、取引事例比較法、収益還元法の3種類があります。「ここらへんの相場は1坪いくらだよ」というのが取引事例比較法で、「建てるのにこれだけかかったからいくらの建物だ」というのが原価法です。「あわせていくらの物件だ」というのが、これまでの値段の決め方でした。しかし、バブルが崩壊しはじめてもう11年。いろいろないろんな世の中の価値観、スキームが転換しました。不動産もご多分に洩れず値段が下がり続けました。「相場は坪いくら」や「いくらかかったから」ではなく、土地や建物はそこで何かをするためにあるので、そのものに価値があるのではないという考え方が徐々に浸透してきました。欧米ではすでに一般的になっているこの「収益還元法」が、日本でも不動産評価の主流となるのは間違いありません。
  したがって、不動産の価値を決めるもの−−それは収益なのです。これからは「収益が不動産価値を決定する」と肝に銘じることが、不動産投資を考える際の出発点にならなければなりません。
  しかもその収益は一時的なものではなく、長期間持続できるものでなくてはなりません。つまり「収益性」に「保全性」が加わって、はじめて安定した賃貸経営が成り立つのです。「高運用益で長く保全する」−−不動産投資の成否はこの一点にかかっているのです。

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「収益を生んでこそ」の不動産投資

  不動産の価値を決める「収益(INCOME)」というのは、あくまで純収益のことです。マンション経営の場合なら、表面の家賃収入からメンテナンス費や管理費、固定資産税などのランニングコストを引いた「手取り家賃(NOI)」が不動産価値を形成します。
  ここで、収益還元法で不動産の価値を評価する具体的な計算法をご紹介しましょう。

それは、
手取り家賃
÷
期待利回り
不動産の価値
5,000万
÷
10%
5億円
6,000万
÷
10%
6億円
という公式です。

  つまり、手取りの家賃収入を期待できる利回りで割り戻すと、不動産の価格になるという計算です。たとえば、年間の手取り家賃が5,000万円の不動産があったとします。年間10%の利回りを期待するとしたら、その不動産の価値は5億円と評価できるのです。もし6,000万円の手取り家賃ならば、不動産の価値は6億円に上がります。
  逆にいえば、5,000万円の家賃収入があるマンションを5億円で購入できれば、10%の利回りが期待できるということでもあります。この公式は非常に大事ですから、ぜひ覚えていただきたいと思います。
  このような収益還元法の世の中になりつつあることを、頭では理解している方がおられるかもしれませんが、実感で理解するのとはまるで違います。
  私も去年、ある投資家のお手伝いをしたときに、「ああ、これか!  」と実感したことがあります。彼らはある物件の競争入札に参加しようとしていたのですが、その時点で年間純収益を5,000万円と見積もって、期待利回りを10%と設定(実際にはもう少し低いのですが、話をわかりやすくするために10%としておきます)して、5億円のビット(指し値)を考えていました。私たちが現場に行って詳しく査定したら、6,000万の手取り家賃を見込めることがわかりました。当社でサブリースしてもいいぐらいです。その旨を明記した査定書を発行し、次の会議で提出しました。
  当社の査定額には、こういう根拠もありました。3階の食堂は使えないだろうとの判断で収益ゼロの査定でしたが、「このまま事務所で貸せる。イニシャルコストをかけたくなければ、厨房だけ壁で仕切れば十分貸せる」と考えました。そんなアイデアもあって、家賃収入の査定が1,000万円上がったのです。
  「6億近くで差している人がいるから、これでは安くて負けますよ」と、いくら言葉でいっても乗ってこなかった担当課長が、その査定書をみたとたん「はいわかりました。6億でいいです」といったのです。この瞬間、わたしは「そうか、これか」と感激し、あらためて収益還元法の時代になっていることを実感したのです。

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自分でできる経営診断−−アパート経営診断表

  当社はアパート・マンション経営を資産運用の事業としてみています。ですから、実質収支しかわからない普通の事業収支表では不十分だと考えています。たとえば、年間300万円の手取り収入(家賃収入−借入金返済)があったとしても、総投資額が3,000万円の場合と3億円の場合とでは、収益の効率は全然違ったものとなりますから、「いくらの手取りが見込めます」という、絶対値だけでは、その計画がいいものか悪いものかは判断できないからです。
  そこで、私はオーナー様へ向けた「アパート経営診断表」というカルテを作ってみました(発行元・不動産体系研究所)。マンション経営の計画を客観的な料率であらわして格付けし、よりよいマンション経営への目安としていただきたいと作成したものです。
  次の表のように、「年間投資利回り」から「収益分岐点」を引いた数字を「評点」として格付けに用います(評点=キャッシュフロー利回りと名づけました)。
  「年間投資利回り」は、手取り収入を総投資額で割ったもので、空室率やメンテナンス費、固定資産税などもしっかり計算して「手取り収入」を算出します。「収益分岐点」は返済期間と金利によって決まります。右欄の「収益分岐点一覧表」にあてはめて数字を出します。
  一見すると面倒そうにみえるかもしれませんが、やってみればそれほど難しいものではありません。たとえば、総投資額が1億円で手取り収入が年間1,000万円の計画だとしましょう。 1の「年間投資利回り」は1,000万÷1億ですから、10%になります。 2の「収益分岐点」は、総投資額1億円を平均金利6%と予測し、全額を20年返済で借り入れるとしたら、8.6%になります。評点は 1− 2ですから、

1・10 −  2・8.6 = 1.4  

となり、「格付け一覧表」による評価はBaの「疑問がある」計画であることがわかります。したがってこの計画は、見直すのが賢明であるといえるでしょう。
  この評点は、投資利回りから返済額を差し引いた純粋な手取り(確定収益)を表すものでもあります。ただしあくまで新築当初の見込みですから、長期のローンを組むならその期間耐えられる商品かどうか、長期的な視野をもって判断する必要があることを付言しておきます。

〔アパート経営診断表〕

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コストがアップしてもお釣りがくる コストアップと元利返済

  このように「不動産投資」の視点でマンション経営を検討すると、従来の常識とは少々異なった発想が可能となります。たとえばイニシャルコストの考え方です。
  仮に1億円の建築費のつもりが7%、金額にして700万円余分にコストがかかるといったらオーナー様は嫌がるでしょう。では安いほうがいいのか、高いほうがいいのか。物件にとっての良さは、コストアップした分、家賃がどう動くかという違う観点で語らなければなりません。
  ここで、コストアップと元利返済額、そして家賃収入の関係を検討してみましょう。

建築コスト 1億円(7%アップ)  →  1億700万
金利 5% 同条件
返済期間 30年 同条件
元利返済額(月額)536,822円 574,399円

  1億円の借り入れで平均金利5%、返済期間30年とすると、元利返済額は月額536,822円です。それに対して建築コストが7%アップすると、元利返済額は月額574,399円となり、返済負担増は月額37,578円になります。利回りが9%程度とすると、月額家賃収入は750,00円と推定できますから、返済負担増の月額家賃に対する割合は5.01%です。
  つまり700万円コストを余分にかけても家賃が5%上がれば、10万円の家賃が105,000円になるのであれば、ペイすることがわかります。
  「トントンなら、やらないほうがいいではないか」と言われるかもしれません。でもコストアップによって魅力のある物件になり、稼働率の上昇につながれば実質の家賃収入アップはそれ以上になる可能性が高いのです。
  稼働率は「空室期間」と「解約率」を減少させることで上昇します。部屋が空いてもすぐに次の入居者様が決まり、かつ退去する人が少なければいいのです。一度解約が出ますと、1ヵ月〜3ヶ月ぐらいは空くのは普通ですから、まず退去しにくい建物にすることが大事です。したがって、かけるべきコストはかけて、家賃の増大と稼働率の増大をめざすべきです。
  多くの方は「コストが7%上がると家賃も7%上がらないといけない」という錯覚に、どうしても陥りがちですが、「コストアップと元利返済額」を検証すると実は5%ですむことがわかります。金利が低ければもっと少なくてすみます。現在の低金利状態なら、3.5%も上がらなくてすむかもしれません。
  ですから、コストをおさえることだけを重視するのは間違いで、入居者様にうけるものをつくることが大切です。もちろん無制限に凝ることはできないでしょうが、家賃と稼働率の上昇のために「これだけは譲れない」という優先順位を明確にして、必要なコストはしっかりかけるのが正しい判断だといえるでしょう。

株式会社アートアベニュー
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